TTG伝説を作り上げた名ステイヤー
TT対決に割って入った遅咲きの刺客
1996年~97年の競馬界は、トウショウボーイとテンポイントのライバル物語に沸きに沸いていた。ダービーこそ若き池上騎手のボーンヘッドでクライムカイザーに攫われたが、クラシック戦線は常にボーイとテンポイントを中心に回っていた。三冠最後の菊花賞もそうだった。
前哨戦の神戸新聞杯、京都新聞杯を連勝してきたトウショウボーイ。前哨戦に古馬との戦いを選び、京都大賞典3着ながらもエリモジョージ、ロングファストといった古豪に先着したテンポイント。
この菊花賞で、両雄を降して見事に戴冠を果たしたのがグリーングラスである。ボーイとテンポイントは、どちらもライバルにだけ勝てば栄冠を勝ち取れると思っていた。したがって、両雄に決着がついたゴール前、グリーングラスの追撃を振り切る余力はなかった。
グリーングラスは、年明けのAJCCをレコードで勝利し、菊花賞がフロックでなかったことを証明したが、トウショウボーイとテンポイントの横に並び立つまでには至らなかった。
その後3頭が相まみえたのは、宝塚記念と有馬記念だった。宝塚記念はトウショウボーイが勝ち、2着テンポイント、3着グリーングラス。有馬記念は1、2着が入れ替わり、テンポイントが勝ち2着にトウショウボーイ、グリーングラスは3着だった。
TTの強さを後世に伝えた3番目の男
有馬記念でボーイが引退し、年明け初戦の日経新春杯でテンポイントは逝った。グリーングラスは、菊花賞で2頭を負かしたものの、両雄の3番手という地位に甘んじるよりほかなかった。しかし、両雄を打ち破り、ボーイとテンポイントがいなければという彼の意地が炸裂するのはこれからだった。
天皇賞(春)、有馬記念と2つのビッグタイトルを獲得し、両雄がターフを去ってから2年間もの間、第一線で活躍し続けた。そして、グリーングラスが活躍すればするほど、彼がライバルと呼んだトウショウボーイとテンポイントの強さは、いっそう際立ったのである。
もし、グリーングラスが彼らの引退以降に凡走を続けていたら、トウショウボーイとテンポイントとのライバル物語も色褪せてしまっただろう。彼らの物語を神話に昇華し、そして自らも彼らの間に割って入ったのは、すべてグリーングラスの功績である。
TTGの翌年、競馬界にはマルゼンスキーという外車の化け物が登場した。彼らの活躍をひと飲みできる器だったが、グリーングラスはそれを許さなかった。
競馬界には"3強"と呼ばれるライバル関係はいつでもある。しかし、"3強"のいずれも年度代表馬の栄冠に輝いているのはTTGだけだ。トウショウボーイとテンポイントが現役時代、グリーングラスはたしかに第三の男だった。しかし、その後の彼の活躍を見れば、あのときグリーングラスが第三の男でよかったと、きっとライバルたちも胸をなでおろしているに違いない。
父:インターメゾ |
母:ダーリングヒメ(母父:ニンバス) |
26戦8勝 |
主な勝ち鞍 |
76’菊花賞(G1) 78’天皇賞(春)(G1) 79’有馬記念(G1) |
日付 | 開催 | レース | 頭数 | 馬番 | 着順 | 人気 | 騎手 | 斤量 | 距離 | 馬場 | タイム | 通過 | 勝馬 (2着馬) |
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1979/12/16 | 中山 | 有馬記念 | 16ト | 3 | 1着 | 2人 | 大 崎 | 55 | 芝2500 | 良 | 2.35.4 | (メジロファントム) | |
11/10 | 東京 | オープン | 5ト | 3 | 2着 | 1人 | 岡 部 | 57 | 芝1800 | 稍 | 1.48.9 | メジロイーグル | |
06/03 | 阪神 | 宝塚記念 | 13ト | 6 | 3着 | 7人 | 岡 部 | 55 | 芝2200 | 良 | 2.12.7 | サクラショウリ | |
01/21 | 東京 | AJCC | 9ト | 5 | 2着 | 2人 | 岡 部 | 58 | 芝2400 | 良 | 2.29.3 | サクラショウリ | |
1978/12/17 | 中山 | 有馬記念 | 15ト | 1 | 6着 | 3人 | 岡 部 | 55 | 芝2500 | 良 | 2.34.2 | カネミノブ | |
06/04 | 阪神 | 宝塚記念 | 7ト | 3 | 2着 | 1人 | 岡 部 | 56 | 芝2200 | 重 | 2.14.8 | エリモジョージ | |
04/29 | 京都 | 天皇賞(春) | 16ト | 3 | 1着 | 1人 | 岡 部 | 58 | 芝3200 | 稍 | 3.20.8 | (トウフクセダン) | |
04/09 | 中山 | オープン | 12ト | 12 | 3着 | 2人 | 岡 部 | 60 | 芝1800 | 良 | 1.50.6 | プレストウコウ | |
01/22 | 東京 | AJCC | 6ト | 2 | 2着 | 1人 | 嶋田功 | 57 | 芝2400 | 良 | 2.28.9 | カシュウチカラ | |
1977/12/18 | 中山 | 有馬記念 | 8ト | 6 | 3着 | 3人 | 嶋田功 | 56 | 芝2500 | 良 | 2.35.6 | テンポイント | |
11/27 | 東京 | 天皇賞(秋) | 12ト | 10 | 5着 | 2人 | 嶋田功 | 58 | 芝3200 | 稍 | 3.23.4 | ホクトボーイ | |
07/03 | 中山 | 日本経済賞 | 10ト | 4 | 1着 | 1人 | 嶋田功 | 58 | 芝2500 | 良 | 2.33.8 | (トウカンタケシバ) | |
06/05 | 阪神 | 宝塚記念 | 6ト | 6 | 3着 | 3人 | 安田富 | 55 | 芝2200 | 良 | 2.13.8 | トウショウボーイ | |
04/29 | 京都 | 天皇賞(春) | 14ト | 2 | 4着 | 2人 | 安田富 | 58 | 芝3200 | 稍 | 3.22.0 | テンポイント | |
02/20 | 東京 | 目黒記念(春) | 13ト | 1 | 2着 | 1人 | 安田富 | 60 | 芝2500 | 良 | 2.34.6 | カシュウチカラ | |
01/23 | 東京 | AJCC | 13ト | 12 | 1着 | 3人 | 安田富 | 55 | 芝2400 | 良 | 2.26.3 | (ヤマブキオー) | |
1996/11/14 | 京都 | 菊花賞 | 21ト | 11 | 1着 | 12人 | 安田富 | 57 | 芝3000 | 重 | 3.09.9 | (テンポイント) | |
10/24 | 中山 | 鹿島灘特別(600万) | 7ト | 1 | 1着 | 1人 | 安田富 | 54 | 芝2000 | 重 | 2.06.6 | (シマノカツハル) | |
10/03 | 東京 | 中距離H(600万) | 17ト | 4 | 2着 | 2人 | 安田富 | 55 | 芝2000 | 良 | 2.02.1 | トミカゼ | |
07/10 | 中山 | マーガレット賞(600万) | 17ト | 10 | 2着 | 2人 | 岡 部 | 54 | 芝2000 | 良 | 2.03.1 | トウフクセダン | |
06/06 | 東京 | あじさい賞(300万) | 12ト | 7 | 1着 | 2人 | 安田富 | 54 | 芝2000 | 重 | 2.06.0 | (キシュウリュウ) | |
05/09 | 東京 | NHK杯 | 16ト | 9 | 12着 | 5人 | 郷 原 | 56 | 芝2000 | 良 | 2.03.9 | コーヨーチカラ | |
04/04 | 中山 | 300万下 | 12ト | 9 | 4着 | 1人 | 郷 原 | 54 | ダ1800 | 不 | 1.53.6 | レッドフラッシュ | |
03/13 | 中山 | 未出未勝 | 13ト | 1 | 1着 | 1人 | 郷 原 | 54 | ダ1700 | 良 | 1.47.8 | (バイエル) | |
02/22 | 東京 | 新馬 | 19ト | 14 | 4着 | 2人 | 郷 原 | 54 | 芝1600 | 稍 | 1.39.9 | ローヤルセイカン | |
01/31 | 東京 | 新馬 | 18ト | 9 | 4着 | 2人 | 郷 原 | 54 | 芝1400 | 良 | 1.26.3 | トウショウボーイ |