時代に逆行する異端の万能戦士
現在の競馬は、昔と違ってプロフェッショナル同士の戦いが繰り広げられる。マイラーはマイルのスペシャリストが集まる中で、その雌雄を決する。ステイヤーもスプリンターも、ダートも牝馬も、みなそうだ。各自、得意な分野で力を発揮できるようになっている。しかし、アグネスデジタルは違った。
勝ち取った重賞数は全部で10個。うちG1を6勝。その中身が仰天である。ダートで2勝、芝で3勝、香港で1勝というマルチぶり。芝とダートの両方で重賞を勝つ馬は結構いるし、両GⅠを勝つ馬もたまにはいる。
しかし、古馬になってダートと芝を縦横無尽に駆け巡った馬なんていなかった。デジタルが歩んだG1ロードは、じつに奇想天外である。NHKマイルC→ジャパンダートダービー→マイルCS→安田記念→南部杯→天皇賞(秋)→香港C→フェブラリーS→ドバイワールドカップ→Qエリザベス2世C→安田記念→宝塚記念……。二足の草鞋をはきながら、どの舞台でも主役をはっていたのだから恐れ入る。
しかも、名古屋優駿とマイルCS、安田記念の3鞍でレコード勝ちという凄まじさである。NHKマイルCで負け、そこからダートに本陣に構えるかと思いきや、ユニコーンS1着、武蔵野S2着のあとマイルCSに参戦である。13番人気の低評価もいたしかたなかったが、それを覆すレコード勝利。
その後、芝で3連敗すると、またもやダートに戻る無節操さ。南部杯で2つ目の勲章を手にすると、次に選んだのはなんと天皇賞(秋)だった。
ヒールと化した天皇賞で、ブーイングをかき消す大勝利
当時、天皇賞には外国産馬の出走規制が設けられていた。外国産馬の出走枠は、たったの2頭。出走を表明していたのは、メイショウドトウ、エイシンプレストン、クロフネだった。当時、最強の名をほしいままにしていたテイエムオペラオーとの対決を望まれたのは、メイショウドトウとクロフネ。この3頭の対決で世論は盛り上がっていたのだ。
ところが、それに水を差すデジタルの出走登録。非難ごうごうだったのは言うまでもない。除外されたクロフネが、仕方なく出走した武蔵野S(ダ1600m)で驚異的なレコードで圧勝すると、それら非難の声はさらに大きくなった。
一気に大ヒールと化したデジタルだったが、そんなブーイングもどこ吹く風で、なんと最強のテイエムオペラオーを斬って捨ててしまったのだ。残り200m付近で先頭に立ったテイエムオペラオー。またオペラオーか、のため息とも驚嘆ともわからぬ声の中、大外からものすごい勢いで突っ込んでくる馬がいる。
アグネスデジタルだった。そのまま1馬身差をつけて優勝。3着メイショウドトウには、そこからさらに2馬身半。圧勝だった。
それにしても破天荒な人生である。4年連続でG1を勝つという息の長い活躍に加えて、この節操のない成績。しかし、それはプロフェッショナル競馬へのアンチテーゼだったのかもしれない。
2003/12/28 中山 有馬記念 芝2500m 良 | 9着 | 四位 57キロ 12頭 7人 2.32.8(8-8-8-9) シンボリクリスエス |
2003/11/02 東京 天皇賞(秋) 芝2000m 良 | 17着 | 四位 58キロ 18頭 4人 2.00.4(10-11-11) シンボリクリスエス |
2003/10/13 盛岡 南部杯 ダ1600m 不 | 5着 | 四位 57キロ 14頭 2人 1.37.0( 11-10) アドマイヤドン |
2003/09/15 船橋 日本TV盃 ダ1800m 良 | 2着 | 四位 58キロ 14頭 1人 1.52.2(6-6-6-3) スターキングマン |
2003/06/29 阪神 宝塚記念 芝2200m 良 | 13着 | 四位 58キロ 17頭 3人 2.13.7(6-6-7-9) ヒシミラクル |
2003/06/08 東京 安田記念 芝1600m 良 | 1着 | 四位 58キロ 18頭 4人 1.32.1( 9-8) (アドマイヤマックス) |
2003/05/01 名古 かきつばた記念 ダ1400m 良 | 4着 | 四位 59キロ 12頭 4人 1.25.9( ) ビワシンセイキ |
2002/04/21 香港 QエリザベスC 芝2000m 良 | 2着 | 四位 57キロ 14頭 人 2.02.6(6-6-7-9) エイシンプレストン |
2002/03/23 アラ首 ドバイWC ダ2000m 良 | 6着 | 四位 57キロ 11頭 人 2.03.8( ) STREET CRY |
2002/02/17 東京 フェブラリーS ダ1600m 良 | 1着 | 四位 57キロ 16頭 1人 1.35.1( 6-6) (トーシンブリザード) |
2001/12/26 香港 香港C 芝2000m 良 | 1着 | 四位 57キロ 14頭 人 2.02.8( ) (TOBOUGG) |
2001/10/28 東京 天皇賞(秋) 芝2000m 重 | 1着 | 四位 58キロ 13頭 4人 2.02.0(9-10-7) (テイエムオペラオー) |
2001/10/08 盛岡 南部杯 ダ1600m 良 | 1着 | 四位 56キロ 9頭 1人 1.37.7( 2-1) (トーホウエンペラー) |
2001/09/19 船橋 日本TV盃 ダ1800m 良 | 1着 | 四位 58キロ 9頭 3人 1.51.2(3-3-3-1) (タマモストロング) |
2001/06/03 東京 安田記念 芝1600m 良 | 11着 | 四位 58キロ 18頭 6人 1.34.1( 16-15) ブラックホーク |
2001/05/13 東京 京王杯SC 芝1400m 良 | 9着 | 四位 59キロ 18頭 4人 1.20.7( 12-13) スティンガー |
2001/01/05 京都 京都金杯 芝1600m 良 | 11着 | 的場 58キロ 16頭 3人 1.33.8( 7-8) ダイタクリーヴァ |
2000/11/19 京都 マイルCS 芝1600m 良 | 1着 | 的場 55キロ 18頭 13人 1.32.6( 15-15) (ダイタクリーヴァ) |
2000/10/28 東京 武蔵野S ダ1600m 良 | 2着 | 的場 55キロ 16頭 4人 1.35.6( 3-3) サンフォードシチー |
2000/09/30 中山 ユニコーンS ダ1800m 良 | 1着 | 的場 56キロ 16頭 1人 1.50.7(3-3-3-4) (マチカネラン) |
2000/07/12 大井 JDダービー ダ2000m 良 | 14着 | 的場 56キロ 16頭 1人 2.09.3(4-4-4-4) マイネルコンバット |
2000/06/14 名古 名古屋優駿 ダ1900m 重 | 1着 | 的場 55キロ 12頭 3人 1.59.8( ) (マイネルコンバット) |
2000/05/07 東京 NHKマイルC 芝1600m 良 | 7着 | 的場 57キロ 18頭 4人 1.34.3( 7-7) イーグルカフェ |
2000/04/08 中山 NZT 芝1600m 良 | 3着 | 的場 56キロ 15頭 7人 1.34.5( 2-2-3) エイシンプレストン |
2000/03/12 中山 クリスタルC 芝1200m 良 | 3着 | 的場 56キロ 16頭 8人 1.10.3( 10-8) スイートオーキッド |
2000/02/20 東京 ヒヤシンスS ダ1600m 良 | 3着 | 的場 57キロ 12頭 3人 1.37.8( 4-3) ノボジャック |
1999/12/23 川崎 全日本3歳優駿 ダ1600m 良 | 1着 | 的場 54キロ 12頭 1人 1.41.1( ) (ツルミカイウン) |
1999/11/27 東京 500万下 ダ1600m 良 | 1着 | 的場 54キロ 13頭 1人 1.38.2( 2-2) (ファインイレブン) |
1999/11/07 京都 もちの木賞 ダ1400m 良 | 2着 | 福永 54キロ 16頭 1人 1.25.1( 5-4) スリーフォーナイナ |
1999/10/09 京都 もみじS 芝1200m 良 | 8着 | 福永 53キロ 10頭 7人 1.09.7( 4-7) エンドアピール |
1999/10/02 阪神 新馬 ダ1200m 良 | 1着 | 福永 53キロ 8頭 1人 1.13.0( 2-2) (ツルマルアラシ) |
1999/09/12 阪神 新馬 ダ1400m 良 | 2着 | 福永 53キロ 7頭 2人 1.26.6( 1-1) マチカネラン |