負けそうで負けない地味~な王者
テイエムオペラオーは、生涯をかけて18億円を稼ぎ出した。キタサンブラック、アーモンドアイに抜かれてしまったが、掛け値なしに強かった。
でも、ほかの名馬にくらべて地味な印象を与える。通算14勝。うちG1を7勝と、ほかの名馬に劣らないばかりかG1の勲章数だけなら抜きんでている。にもかかわらず、競馬ファンの心に残る名馬かというと、実際そうでもない。
オペラオーが走っていたのは20世紀から21世紀にかけての1998年~2001年まで。メイショウドトウ、ナリタトップロード、ラスカルスズカと同期で、グラスワンダーやスペシャルウィーク、ステイゴールドといった面々とも顔を合わせている。
中でも5歳時のオペラオーは、むちゃくちゃに強かった。8戦8勝。春秋の天皇賞、宝塚記念、有馬記念の両グランプリ、そしてジャパンカップまで制し、古馬路線完全制覇。1年間でこのグランドスラムは、いまだオペラオーだけの快挙である。
オペラオーは強すぎた。
しかし、強すぎてライバルを作れずとも心に残る名馬はいた。マルゼンスキーやルドルフ、ディープインパクトがそうだ。
オペラオーには、マルゼンスキーのようなぶっち切りの美学はなかった。ルドルフのように三冠馬の威厳もない。ディープのような海外評価がない。
いつも負けそうで負けない。これがオペラオーの王者の美学だった。4歳の毎日杯から6歳の有馬記念まで重賞22連戦。レコード勝ちはナシ。4馬身差で勝った毎日杯以降は、ほぼ2馬身以内の接戦ばかり。オペラオーには、圧倒的な力で相手をねじ伏せる強さがなかった。だから記憶に残らない。
絶対王者の負けない美学
そんなオペラオーのベストバウトは、5歳の有馬記念である。好スタートをきったはずのオペラオーは、前をカットされる不利でやむなく後方に待機せざるを得なくなった。
そしてスタンド前にさしかかるあたり、今度はアドマイヤボスにかぶせられ馬群に閉じこめられてしまう。並の馬なら、ここでオシマイになってもおかしくない程の致命的な不利だった。それでも絶対王者は諦めない。4コーナーでも10番手という絶望的な位置だったが、オペラオーはすべての不利を受け入れ、そしてその上できっちり勝って見せた。
これこそオペラオーの勝利の美学。負けそうな状況であっても、絶対に負けない王者だった。
また、オペラオーを語る場合、延々と繰り返されるかに思えたメイショウドトウとのワンツーフィニッシュがある。
トウショウボーイとテンポイント。タマモクロスとオグリキャップ。彼らのように1、2度のマッチレースならファンは喜ぶが、オペラオーとドトウは8回の対戦でワンツーがなんと6回。すべてG1。ここまでやられると、ファンもさすがに食傷である。
4歳クラシックから6歳の有馬記念まで、律儀にローテーションを守り、故障もなく走り続け勝利を重ねていったオペラオー。そこにはエンターテインメント性もないし、ミステリアス性も皆無。ただただタフで強い。
しかし、私は個人的には、もっとも共感できる名馬だと思うのだ。ドラマティックじゃないからこそ、私でも頑張ればなんとかなると思わせてくれたオペラオーは、やはり偉大だった。
2001/12/23 中山 有馬記念 芝2500m 良 | 5着 | 和田竜 57キロ 13頭 1人 2.33.3(7-8-7-6) マンハッタンカフェ |
2001/11/25 東京 ジャパンC 芝2400m 良 | 2着 | 和田竜 57キロ 15頭 1人 2.23.8(6-4-6-6) ジャングルポケット |
2001/10/28 東京 天皇賞(秋) 芝2000m 重 | 2着 | 和田竜 58キロ 13頭 1人 2.02.2(2-4-4) アグネスデジタル |
2001/10/07 京都 京都大賞典 芝2400m 良 | 1着 | 和田竜 59キロ 7頭 1人 2.25.0(2-2-2-3) (スエヒロコマンダー) |
2001/06/24 阪神 宝塚記念 芝2200m 良 | 2着 | 和田竜 58キロ 12頭 1人 2.11.9(7-7-6-9) メイショウドトウ |
2001/04/29 京都 天皇賞(春) 芝3200m 良 | 1着 | 和田竜 58キロ 12頭 1人 3.16.2(7-7-6-4) (メイショウドトウ) |
2001/04/01 阪神 大阪杯 芝2000m 良 | 4着 | 和田竜 59キロ 14頭 1人 1.58.7(9-8-8-2) トーホウドリーム |
2000/12/24 中山 有馬記念 芝2500m 良 | 1着 | 和田竜 57キロ 16頭 1人 2.34.1(14-12-12-11) (メイショウドトウ) |
2000/11/26 東京 ジャパンC 芝2400m 良 | 1着 | 和田竜 57キロ 16頭 1人 2.26.1(6-5-7-7) (メイショウドトウ) |
2000/10/29 東京 天皇賞(秋) 芝2000m 重 | 1着 | 和田竜 58キロ 16頭 1人 1.59.9(5-6-5) (メイショウドトウ) |
2000/10/08 京都 京都大賞典 芝2400m 良 | 1着 | 和田竜 59キロ 12頭 1人 2.26.0(3-3-4-4) (ナリタトップロード) |
2000/06/25 阪神 宝塚記念 芝2200m 良 | 1着 | 和田竜 58キロ 11頭 1人 2.13.8(4-4-5-5) (メイショウドトウ) |
2000/04/30 京都 天皇賞(春) 芝3200m 良 | 1着 | 和田竜 58キロ 12頭 1人 3.17.6(7-7-3-3) (ラスカルスズカ) |
2000/03/19 阪神 阪神大賞典 芝3000m 稍 | 1着 | 和田竜 58キロ 9頭 1人 3.09.4(4-4-4-3) (ラスカルスズカ) |
2000/02/20 京都 京都記念 芝2200m 良 | 1着 | 和田竜 57キロ 11頭 1人 2.13.8(7-7-6-8) (ナリタトップロード) |
1999/12/26 中山 有馬記念 芝2500m 良 | 3着 | 和田竜 55キロ 14頭 5人 2.37.2(5-5-4-5) グラスワンダー |
1999/12/04 中山 ステイヤーズS 芝3600m 良 | 2着 | 和田竜 57キロ 14頭 1人 3.46.2(5-5-3-3) ペインテドブラック |
1999/11/07 京都 菊花賞 芝3000m 良 | 2着 | 和田竜 57キロ 15頭 2人 3.07.7(9-9-11-11) ナリタトップロード |
1999/10/10 京都 京都大賞典 芝2400m 良 | 3着 | 和田竜 57キロ 10頭 3人 2.24.4(6-6-4-4) ツルマルツヨシ |
1999/06/06 東京 日本ダービー 芝2400m 良 | 3着 | 和田竜 57キロ 18頭 3人 2.25.6(8-8-8-4) アドマイヤベガ |
1999/04/18 中山 皐月賞 芝2000m 良 | 1着 | 和田竜 57キロ 17頭 5人 2.00.7(14-14-11-8) (オースミブライト) |
1999/03/28 阪神 毎日杯 芝2000m 良 | 1着 | 和田竜 55キロ 14頭 3人 2.04.1(5-4-4-3) (タガノブライアン) |
1999/02/27 阪神 ゆきやなぎ賞 芝2000m 稍 | 1着 | 和田竜 55キロ 14頭 2人 2.05.3(5-4-4-2) (アンクルスルー) |
1999/02/06 京都 未勝利 ダ1800m 良 | 1着 | 和田竜 54キロ 10頭 1人 1.55.6(2-2-1-1) (ヒミノコマンダー) |
1999/01/16 京都 未勝利 ダ1400m 良 | 4着 | 和田竜 54キロ 16頭 2人 1.28.0( 5-5) ゼンノホーイボー |
1998/08/15 京都 新馬 芝1600m 良 | 2着 | 和田竜 52キロ 12頭 1人 1.36.7( 2-2) クラシックステージ |