【名馬コラム】ホエールキャプチャ　府中マイルで存在感を発揮する芦毛の捕鯨女王

ヴィクトリアマイルで念願のGI初制覇

GIを勝てば名馬の仲間入り。間違いない。もちろんGIを勝てなくても名馬に数えられる馬はいるのだが、GIを勝つことで名馬の選択肢にあがるのは、やはり間違いない事実である。

そういう意味でいうと、ホエールキャプチャはGIを勝てて本当に良かったと思う。阪神JF2着、桜花賞2着、オークス3着、秋華賞3着、エリザベス女王杯4着と、2～3歳時はGIで惜敗を続け、この時点で名馬入りしてもおかしくない。2歳のときとはいえ、あのオルフェーヴルを負かしているのだ。しかし、芦毛の容姿も手伝って、個人的にはなかなかGIを勝てない判官贔屓のきらいがあった。本当は強いのに、なんだかもどかしい気持ちでいたものだ。

そして迎えた、2012年のヴィクトリアマイルである。一昨年の三冠牝馬で、昨年覇者のアパパネ、桜花賞で後塵を拝しているマルセリーナ、福島牝馬Sを好時計で完勝してきたオールザットジャズなどが当面のライバルと目された。

ホエールキャプチャは、前走の中山牝馬Sで5着に負けていたこともあり、4番人気での出走となった。私は、ホエールキャプチャが絶対に勝つと信じて、馬券をしこたま買っていた。

レースは、前半800m46.4秒－後半800m45.8秒というハイラップ。ホエールキャプチャは、これを3番手追走から、3着マルセリーナに次ぐ上り33.8秒を繰り出して、悲願のGI初制覇を果たしたのである。

馬券で儲かったことも嬉しかったが、これでホエールキャプチャが名馬の仲間入りを果たしたことも同じように嬉しかった。

本当は繊細なお嬢様だったホエールキャプチャ

ホエールキャプチャといえば、とにかく東京マイルに強いというイメージがある。いや、イメージではなく実際に強かった。東京芝1600mの成績は【3 1 0 2】で、大きく崩れたのは2014年の安田記念15着だけ。

なぜ東京マイルに実績が偏っているのかというと、ホエールキャプチャは非常に繊細な馬で、環境が変わるとそれに慣れるのに数日を要するのだそうだ。そのため、ホームの東京競馬場で好走率が高まるというわけだ。

また、ホエールキャプチャは、レース当日にトレセンから競馬場へ向かう間に、体が引き締まったという。レースへ向けて集中力を高めていると思われ、まさにアスリートならではのエピドートではないだろうか。

もう一つ彼女のエピソードを紹介すると、ホエールキャプチャは日向ぼっこが大好きだった。調教が終わった午後になると厩舎から出てきて、陽光の下で30分ほど日向ぼっこをするのが日課だったそうだ。なんとも微笑ましい話ではないか。

さて、ヴィクトリアマイルを勝った後のホエールキャプチャは、翌年の同レースで2着、府中牝馬S、東京新聞杯を勝つなどの活躍をしてみせた。牝馬限定戦だけでなく、牡馬混合でも勝っている。しかも、その東京新聞杯は57キロ（牡馬換算で59キロ）を背負っての完勝である。もう名牝といっていい。

私は、上記のレースのいずれも儲けさせてもらったが、ほかのレースでもしこたま馬券を買っているので、実際はマイナス収支である。私の場合、本来は機械的に買う馬券を決めているのだが、ことホエールキャプチャが出走してくると、どうしても彼女を応援したくなってしまう。まぁ、それが競馬の醍醐味でもあるのだけど。