【名馬コラム】ロゴタイプ　復活まで諦めない雌伏の名馬

勝手にシンパシーを感じた長い長いトンネル

ロゴタイプという競走馬がいる。彼は、2013年の皐月賞馬である。

私はその昔、会社員だった頃、入社してすぐにラッキーパンチで、数千万円の仕事を成功させた。それを実力と勘違いしてしまうのは若さゆえ。当然私も勘違いした。しかし、ラッキーパンチはそうそう何度も続かないものだから、いつしか私は平凡会社員の仲間入りをしていた。

その数年後に出会ったのがロゴタイプだった。朝日杯FS→スプリングS→皐月賞と怒涛の勢いで、GI2つを含む重賞3連勝を成し遂げた。だが、その後がいけなかった。そこから丸3年、彼が先頭でゴールに飛び込むことはなかった。

もちろん、彼の場合はラッキーパンチなどでは断じてない。折り紙付きの実力の持ち主であり、不利があったり重馬場に祟られたりしただけで、ロゴタイプの能力を疑う者などいなかった。実際、生涯で2ケタ着順に沈んだことは一度もないのだ。

だが、私は勝手にシンパシーを感じてしまった。感じてしまったのだから仕方ない。ベゴニア賞と皐月賞でレコードを記録するスピードスターだったが、2歳時の陣営は「ダート馬じゃないかな？」と語っていた。それなのにレコードホルダーである。分不相応な感じがまた、私の琴線にふれまくった。

私がロゴタイプを意識しだしたのは、彼が6歳になった頃だった。中山金杯を1番人気で負け、次走にダートの根岸Sに出走したときである。なんというか、結果を出さなくてはと、闇雲に仕事をこなしている自分を重ねてしまった。ロゴタイプにはいい迷惑なんだろうけど。

見事な復活劇で雌伏を証明

皐月賞から16戦勝てず、ロゴタイプが次に選んだのは安田記念だった。2走前の中山記念から、新たに田辺騎手とコンビを組み、前走のダービー卿CTでは2着に好走していた。

私は、躊躇なくロゴタイプの馬券を買って応援していた。

この年の安田記念には、とんでもない実力馬がいた。昨年の年度代表馬で、GI4連勝でここに臨んできたモーリスである。単勝1.7倍というダントツ人気で、誰もがモーリスの勝利を疑っていなかった。

ロゴタイプの鞍上田辺騎手は「モーリスに勝つためにはどうしたらいいか」を考えたそうで、その結果が2歳時以来の「逃げ」だった。はたから見れば奇襲だったが、田辺騎手は「最初から内を走ろうと思っていたし、後続が勝手に外に行ってくれた」と、作戦通りだったことを後々に語っている。

とにもかくにも、強敵モーリスを退けて、皐月賞以来の勝利をこの大舞台であげてくれたロゴタイプに拍手喝采。勝ってくれたことが嬉しく嬉しくて、馬券を獲ったことは二の次みたいな感じだった。しかししかし、よくよく考えてみたら、やっぱりロゴタイプは私とは違うんだという現実を見せつけられた瞬間でもあった。

ロゴタイプは雌伏の時を過ごし、やがてその実力を世に知らしめた。三國志でいえば劉備玄徳、戦国時代でいえば徳川家康、FFでいえば16のクライヴ。やっぱり、ロゴタイプは私とは違うんだ。

私は、うだつが上がらないまま会社員を辞めてフリーになり、いまだGIを勝てないままでいる。