【名馬コラム】ナリタトップロード　ファンから愛された絶対王者第一のライバル

クラシックを3強で一冠ずつ分け合う

1999年のクラシックは、3強対決といわれた。テイエムオペラオー、アドマイヤベガ、そしてナリタトップロードである。

ナリタトップロードの父は、気性が荒いことで有名なサッカーボーイ。しかし、トップロードは非常におとなしく、牧場でも厩舎でも人の言うことをよく聞く手のかからない子だった。デビュー戦から、折り合いに不安はなく、2戦目で初勝利を上げると、きさらぎ賞と弥生賞を勝ってクラシックの主役に躍り出た。

3強が揃って顔をそろえたのは、雨が降りしきる皐月賞。トップロードは上り最速の脚で追い込んだが、テイエムオペラオーにクビ、ハナ差及ばずのタイム差なしの3着に敗れた。アドマイヤベガは、雨馬場に持ち前の末脚を殺されて6着だった。

続く日本ダービーは、トップロードは1番人気に押されたが、アドマイヤベガの急襲に遭って2着惜敗。

京都新聞杯2着で迎えた、クラシック最後の菊花賞。トップロードと鞍上の渡辺薫彦騎手は、これまでとは違う積極策を取り、4コーナー手前でスパートする早めの競馬。後方から襲いかかるテイエムオペラオーをクビ差抑えて、悲願のGI初制覇となった。

結局、皐月賞はテイエムオペラオー、ダービーはアドマイヤベガ、菊花賞をトップロードと、3冠は3強がそれぞれ分け合う形となった。

ファンから愛され続けた栗毛のステイヤー

トップロードは4年連続で有馬記念に参戦している。7着、9着、10着、4着と奮わなかったのは、トップロードが高速決着を得意とするタイプだったため、暮れの最終週となる中山競馬場が合わなかったから。

陣営も「中山は苦手」と公言していたが、なぜ毎年有馬記念に出走を続けたのかといえば、とにもかくにも人気があったからである。3歳時が人気投票6位で、その後も2位、4位、1位と常に上位に支持されていた。

とくにラストランとなった有馬記念のとき、陣営は香港ヴァーズを予定していたが、ファン投票1位になったことを受け、沖調教師と馬主の山路氏は「ファンの期待に応えるため」に有馬記念への出走を決めたのである。

トップロードが人気を集めた理由はいくつも思いつく。絶対王者に立ち向かう姿、諦めずに立ち上がる姿、挫折を乗り越える精神力もさることながら、鞍上の渡辺薫彦騎手との絆も忘れてはならない。

ステイヤーズSで4着に負けた後、トップロードの鞍上は的場均騎手に乗り替わりとなった。しかし、有馬記念9着、京都記念3着と結果は出せなかった。そして、再び渡辺薫彦騎手に戻った阪神大賞典で、菊花賞以来の勝利を上げたのである。

ファンは、トップロードにはやっぱり渡辺薫彦騎手なんだと思っただろう。勝手な思い込みではあるが、そういう部分もファンの支持を集めたのだと思われる。

騎手を引退し調教師となった渡辺氏は、「いろんな可能性をくれた。慢性的に背腰が弱かったけど、それをこらえて頑張ってくれた。性格は『ウマ娘』の設定そのままだと思います。僕も、ああいう馬を作りたい」と答えている。