【名馬コラム】バランスオブゲーム　GIへの登竜門として立ち塞がるGIIの門番

歴代最多のGII6勝をあげたトライアルホース

GI勝利はないものの、重賞7勝をあげているバランスオブゲーム。GII6勝は、いまだに歴代最多を誇っている。

最近の競馬は、国内でもGIの数が増え、海外GIへの挑戦もスキルが上がって成績も伸びてきた。それも手伝って、GI勝利がないとなかなか名馬として語られることがないが、バランスオブゲームはまぎれもない名馬といっていいだろう。

バランスオブゲームが勝った重賞は、新潟2歳S、弥生賞、セントライト記念、毎日王冠、中山記念2勝、オールカマーの計7鞍。本番では勝てない、いわゆるトライアルホースと言われることもあるが、本番がてんでダメだったかというと、そういうわけでもない。

クラシック3冠は皆勤賞で、皐月賞8着、ダービー7着、菊花賞5着と悪くないし、3年連続で挑戦したマイルCSは4着、8着、5着。7歳の宝塚記念では、ディープインパクトの3着という実績もある。

雨が降りしきる中山記念を勝ち、同じく雨が降っていた宝塚記念でディープインパクトに肉薄する3着だったことから荒れ馬場に強いイメージはあるが、実はレコードを二度記録するスピード自慢でもあった。

GIIで負けた相手は、その後のGI馬に

バランスオブゲームといえば、GII大将のイメージが強いが、言い得て妙である。

というのも、バランスオブゲームがGIIで負けたとき、その勝ち馬の活躍は約束されたようなものだった。

4歳時の日経賞は、イングランディーレの2着だった。イングランディーレは、翌年の天皇賞（春）を勝つことになる。続く金鯱賞ではタップダンスシチーにコンマ3秒及ばずの4着。タップダンスシチーは、同年のジャパンCを制している。また、4歳時の中山記念で後塵を拝したのは、その後に重賞3勝をあげるローエングリンだった。

また、GIIで負かした馬たちも錚々たる顔ぶれだ。アドマイヤマックス（高松宮記念）、カンパニー（天皇賞秋、マイルCS）、ダイワメジャー（皐月賞、天皇賞秋、マイルCS、安田記念）といった強豪たちを相手に、何度も重賞を勝っているのだから、その潜在能力は推して知るべし。

主戦だった田中勝春騎手は「1800mのGIがあれば勝てたと思う」とコメントしている。そんなバランスオブゲームの最後のレースであり、最後の勝利となったオールカマーでアクシデントに見舞われる。

本馬場入場で内ラチに突っ込み、その衝撃でバンテージがずれてしまった。競争能力に問題なしとそのまま発走して見事に優勝をかっさらったが、レース後に歩様を乱し、屈腱炎を発症して引退を余儀なくされた。

田中勝春騎手は「発走時刻が遅れてもバンテージを巻き直してくださいと言うべきでした」と回顧し、「関係者に申し訳ないと思ったし、長い間、頑張ってくれたバランスオブゲームに可哀想な事をしてしまった」と、20年経った今でも後悔している。